https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040325-11a.pdf
過労死が労災と認定されるためには、この認定基準に記載されている要件を満たす必要があります。
1つ目の要件は、対象疾病を発症したこと、2つ目の要件は、業務による過重負荷があったことです。
第一に、労災補償の対象となる脳・心臓疾患を発症したことが必要になります。
その対象疾病とは、次のとおりです。
①脳血管疾患
・脳内出血(脳出血)
・くも膜下出血
・脳梗塞
・高血圧性脳症
②虚血性心疾患等
・心筋梗塞
・狭心症
・心停止(心臓性突然死を含む)
・解離性大動脈瘤
これらの対象疾病については、死亡診断書などから明らかになります。
死亡診断書に、脳卒中や急性心不全と記載されていても、その原因となった病気が対象疾病以外のものであると確認されない限り、対象疾病と同じ扱いとなります。
また、不整脈による突然死等は、心停止に含めて取り扱うことになっています。
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過労死で労災と認定されるためには、被災労働者が、対象疾病を発症する前に、①異常な出来事、②短期間の過重業務、③長期間の過重業務のいずれかが認められる必要があります。
①異常な出来事とは、具体的には、次のような出来事です。
・極度の緊張、興奮、恐怖、驚がくなどの強度の精神的負荷を引き起こす突発的または予測困難な異常な事態
・緊急に強度の身体的負荷を強いられる突発的または予測困難な異常な事態
・急激で著しい作業環境の変化
この①異常な出来事については、発症直前から前日までにこれらの出来事が発生したかがポイントになります。
②短期間の過重業務については、発症前のおおむね1週間前から「特に過重な業務に従事していた」と認められることが必要になります。
「特に過重な業務」とは、日常業務に比較して特に過重な身体的、精神的負荷を生じさせたと客観的に認められる業務をいいます。
業務の過重性を評価するにあたっては、次の負荷要因を検討する必要があります。
・労働時間
・不規則な勤務
・拘束時間の長い勤務
・出張の多い勤務
・交代制勤務、深夜勤務
・作業環境(温度環境、騒音、時差)
・精神的緊張を伴う業務
これらの勤務の要素は、次の③長期間の過重業務を検討する際にも考慮されます。
③長期間の過重業務については、発症前1カ月間におおむね100時間、または発症前2カ月間ないし6カ月間にわたって、1カ月あたりおおむね80時間を超える時間外労働が認められれば、原則として労災と認定されます。
時間外労働の80時間から100時間が過労死ラインと言われるのは、上記の労災認定基準となっているからなのです。
この③長期間の過重業務では、被災労働者にどれだけの時間外労働が認められるかが重要なポイントになりますので、弁護士は、労働時間をどのように証明するかに知恵を絞ります。
ただ、労災認定基準に問題がないわけではありません。
一例を挙げれば、
①対象疾病を限定している。
②治療機会喪失事案(脳・心臓疾患を発症し、すぐに治療すれば救命できたにも関わらず、業務を継続せざるを得ず、治療の機会を逸して死亡や重大障害に至った事案)の救済を拒否している。
③過重負荷の評価基準が厳格に過ぎる。
④業務との関連性が強いとされる時間外労働時間数の基準が高すぎる。
⑤労働時間(労働の量)以外の労働の質の要因を限定的にしか考慮していない。
などの問題点が挙げられます。
一見、労災認定基準に該当しないと思われるようなケースでも、弁護士の助力次第で労災を認めさせることができる場合もありますので、諦めずに弁護士に御相談下さい。